先の滞在先であるアムステルダムからトゥールーズに降り立ったあとのこと。バスで市街地へ移動中に目にしたのは、緑眩しいラグビーフィールドの数々だった。途中でラグビー競技場も見つけた。フランス第四の都市トゥールーズは同国の中でもラグビーのメッカだと聞くけれど、フランスへ行ったことのあるサッカー経験者も「サッカー場よりラグビー場のほうが多い」と話していたのを思い出す。
堂々としたラグビー王国ぶりをみせつけるフランスに、日本代表の選手たちはどんなことを感じただろう。「すげえな。こんなところで育ったやつらと同じ舞台で戦うのかよ」と。このことはオランダで無数のサッカーコートを見た時にも感じた。欧州さまざまな国にいま日本人は点在しているけれど、日本との環境の違い、スポーツ文化の進度と深度を実感していることだろう。日本のアスリートたちは、絶望と希望を交互に抱きながら自分たちを奮い立たせているに違いない。
自分が同じ時に同じ場所に来て。自分もサポーター、応援者として選手とともに戦うのだという気概を持ってみて、初めて実感したことだった。
その後、スタジアムへ。6度のチケットチェックと荷物チェック一度を経て入る。ところが、荷物チェックで冷たい水を入れた水筒を没収される。会場の水は高い、でも「荷物チェックはザル」と前日他の試合を既に観た人から聞いていた。まったく違っていたわいな。
「あそこのちいさい白い小屋にこれ預けてきて」と言われ、心配そうな夫に待っておれのサインを出してから小屋へダッシュ。金髪のお姉さんから「17時まで取りに来てね」と青い引換券を渡される。そして「行け!ジャパン!」とサムアップで見送ってくれた。
泣く泣く500円もする水を購入。バスから会場入りする選手を入り待ちした。
松田力也は笑顔をたたえ、具っちゃんも照れ臭そうに。負傷のキャプテン姫野選手にも拍手が。最後に現れたマイケルリーチに最大の拍手とエールが贈られた。
出迎える間、人だかりの列に一時間並んだ。暑いし、しんどい。サポーターはいつもこんな思いをして日本代表を応援していたのだ。いつも取材側だったけど、ファンの側に回ってあらためて気づくこともある。試合前だと言うのに少し泣けた。
アップ中の選手にふり降りるジャパンの応援ソングは長渕の『とんぼ』トンボ。チリの応援ソングもかかったけど、長渕のトンボとはうってかわってアップテンポであった。郷愁滲むとんぼだが、SOの李君ら若い選手は知らないだろうなあとぼんやり思う。
初戦、好スタート!ジャパン、おめでとう。取材してきた帝京大学の選手たちも皆活躍していた。特にあまり注目されないけれど、中村亮土は本番に強いと改めて感じた。ミスは多かったが、初戦はどんな大会も難しい。
W杯初出場のチリの意気込みは凄かった。サポーターを見ていればわかる。♪リ、リ、リ、レ、レ、レというコミカルな掛け声が入るチャントがめっちゃ印象的。南米人のエネルギーが伝わってきた。南半球から来てコンディショニングが難しかっただろう。後半開始5分で足がつっている選手もいた。それでもボールを回しスピーディーなラグビーを見せてくれた。特にハーフ団の裏をかくプレーは面白かった。
試合後。またもや謎に長渕。「乾杯」が流れて夫と笑った。
<MONEY>
・地下鉄=(€1.8×2)を2人分
・駅のカフェでクロワッサンとかカプチーノ2人分=€9 ランチのサンドイッチ&500ml水=€11
・会場で水500ml購入=€3.5
・帰りのスーパーで夕食のサラダ、水1000mlを2本、朝食用にパン、チーズ=€16