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『観ないで死ねるか!sports love Journey〜ラグビーW杯編』VOL7「遅延」

「ブラボー!」

乗客とともに私も歓声を上げた。まさしく今、電車が動き出したからだ。1時間40分ほど遅れて。

9月18日(月)14時40分、これからフランスの新幹線TGVでリヨンからスペイン・バルセロナまで移動する。フランスのナルボンヌまで3時間、そこで乗り換えバルセロナまで2時間の旅である。本来、出発は正午12時だった。だが、電車は動かない。放送はあるもののフランス語のみなので、後ろに座る英国人夫婦に尋ねると「遅れるんだって。でもどの線路もtroubleで止まってるらしくて電車を乗り換えても無駄。車で行くとか変更するか、とりあえず待つかだね」お二人は?「うちらは待つ」ですね。私たちもそうします。

待ってたら、ほどなくして15時出発だとわかる。ナルボンヌで次の電車が4時間待ちだった私たちはまだ1時間猶予がある。じゃ、このまま待つか。英国人夫が「電車のドアは開けてあるから外に買い物とか行ってもいいんだよ」と教えてくれる。ちょうどお昼時である。夫に「ねえ、スタバでコーヒー買ってきてよ」と頼むと「胃が気持ち悪いから動きたくない。ママが行ってくれば?俺はいらない」と言う。一応ホテルのモーニングから持参したクロワッサンがあるし、水もあるからいいわ、とした。人には頼むが自分は動かない、面倒くさがり女なのだ。

ただ、他の席の若者は次々外へ出ていた。すると20分も経たないうちにまた放送が。今度は女性の声。明らかに弾んでいる。なんなの?なんなの?良い知らせ?今度は英国人妻が「出るわよ。私たちの電車、すぐに出るんだって!」と教えてくれる。やった~!でも出発15時だと思って外に出ちゃった人たちはどうなるのか。恐らく駅構内の放送などで知らせていることだろう。でも、うちらのようにフランス語がわからなかったらどうなるのか?みんなが電車に戻る猶予を与えるはずだ。日本なら全員いるかチェックするに違いない。

が、その猶予は短かった。20分ほどで、突然予告もなく電車は動き出した。斜め前の男性の席にはノートやペン、荷棚には黒いリュックサックが残ったままだ。うちのP(パートナー)が「気になる~」とずっと見ているが、席に戻ってこない。このミッシングボーイに「ショーン」と名付け、ショーンがどこかの車両に跳び乗っていますようにと祈り続けた。

仮にPが「スタバ、行ってきま~す」と出ていたら、どうなっただろうか。LINE電話をかけても、いつも出もしないPである。私はどうしただろうか。想像しただけでもゾッとする。Pは私と違ってそんなに胃腸が丈夫ではない。だが今日ばかりはPの「よわよわ胃腸」に感謝である(自分の面倒くさがりな性格にも)。私が「スタバに行かなくて良かったね」と言うと、Pはどや顔で言った。

「動くのは大事だけれど、動かないほうが大事な時もある」

金言出ました!とおだてると、胃を押さえつつ嬉しそうに頷くPであった。

写真はTGV車中。席はゆったりしているし、仕事もはかどりとても快適。

1時間40分、待っている間に撮った駅のホーム。リヨンは雨だった。

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